
家の中心にある囲炉裏は暮らしの中心でもあります。人々が囲炉裏を囲み誰かが物語を語るとそこは「語りの場」にもなります。物語にはメロディーを伴って歌うように語られるものと、日常に近い口調で語られるものがあります。さらにその中から「神謡」「英雄叙事詩」「散文説話」の3つを主要なジャンルとして紹介することが多いです。
1.神謡
地域によってカムイユカㇻやオイナ、メノコユカㇻなどと呼ばれます。多くはカムイ※が主人公でカムイの目線で語られます。カムイ同士の話もあれば、人間とカムイの関わりを描いた内容の話があります。話ごとにおおよそ決まったメロディーに短い言葉をのせて語ります。また、言葉と言葉の間にはサケヘやサハなどと呼ばれるフレーズを繰り返し挿入しながら語るのが特徴です。
アイヌ語動画講座 「カムイユカㇻ 子犬たち」
※カムイ(いわゆる神)についてはこちらの記事もご覧ください。
カムイとは(The JR Hokkaido)|https://thejrhokkaido.com/series/upopoy/kamui/
2.英雄叙事詩
地域によってユカㇻやサコㇿペ、ハウキなどと呼ばれます。多くは飛行などができるような超人的な力を持つ少年英雄が主人公であり、自分の生い立ちから冒険、恋愛、そして同じような力を持つ敵たちとの戦いを描いた内容の話があります。語り手ごとに持つ短いメロディーに言葉をのせて語ります。語り手や聞き手はレㇷ゚ニという木の棒で炉縁などを叩き拍子をとりながら語ります。また、物語の展開に合わせて「ホッ!」や「ヘッ!」といった短い合いの手をいれて盛り上げます。
アイヌ語動画講座「口承文芸に沼る 語り手への道 その1」
3.散文説話
地域によってウエペケㇾ、トゥイタㇰ、トゥイタㇵなどと呼ばれます。主人公も話の内容も様々ですが、多くは人間が主人公で自らの人生を振り返る形で語ります。日常に近いような語り口調、あるいはそれより少し単調な口調や、逆に抑揚を大きくつけた口調で語ります。神謡や英雄叙事詩に近い内容のものや、固有の人物が主人公の話、和人(※)が主人公の話などもあります。
※和人:本州・四国・九州などにルーツを持つアイヌではない民族のこと。
ここまで3つの主要なジャンルを紹介しましたが、物語は語り手の調子によって毎回自由に語られるため、これらの特徴に当てはまらない場合もたくさんあります。20世紀初めごろから日本語を使うことが当たり前という同化の圧力によって、家の中で親から子へアイヌ語を教えることを断念させてしまったことにより、アイヌ語は消滅の危機にある言語となっています。また、物語以外の娯楽が普及したこともあり声だけで物語を語り合う機会も少なくなっています。それでも「語りの場」を活発にさせる活動は各地で行われており、ウポポイでも囲炉裏を囲み物語の実演を行っています。様々な想いのつまった「語りの場」を訪ねてみてください。
※くわしくはウポポイ公式サイトをご覧ください。
「口承文芸実演ネウサㇻアン ロ」毎日2回実施|https://ainu-upopoy.go.jp/program/newsaran-ro/
案内人

ケニ
イランカラㇷ゚テ! ケニです。昨年度まで連載していた「ソンコdeソンコ」で最後の4年間挿絵を担当していました。実は普段ウポポイでアイヌ語に関する仕事を担当し、アイヌ語教室の講師や物語の実演などをしています。この連載では普段の仕事にも関係するアイヌの物語について紹介したいと思います。
Information
ウポポイ(民族共生象徴空間)
ウポポイは日本の貴重な文化でありながら存立の危機にあるアイヌ文化の復興・創造等の拠点となるナショナルセンターです。豊かな自然に抱かれたポロト湖のほとりで、アイヌ文化の多彩な魅力に触れることができます。愛称「ウポポイ」は、アイヌ語で「(おおぜいで)歌うこと」を意味します。
| 住所 | 白老郡白老町若草町2丁目3 Google Map |
|---|---|
| 電話番号 | 0144-82-3914 |
| 営業時間 | 9:00~17:00(時季により変動あり) ※詳しくはウポポイ公式WEBサイトを確認 |
| 閉園日 | 月曜日および年末年始(12/29~1/3) ※月曜が祝日または休日の場合は翌日以降の平日に閉園 ※特別開園日・閉園日あり |
| 料金 | 一般1,200円、高校生600円、中学生以下無料 ※20名以上に適用する団体料金あり ※有料の体験プログラムや博物館の特別展示の料金を除く |
| アクセス | JR白老駅から徒歩約10分 |
| 関連リンク | 公式サイト |

「アイヌアートショー2026」開催
アーティストや工芸家たちの作品や表現に、五感を通じて触れる特別な2日間
本イベントは、アイヌ文化の伝統を受け継ぎながら、現代的な創造性によって新たな表現へと広げるアーティストや工芸家が一堂に会する場として開催しています。5回目の節目を迎える本年は、これまで以上に多彩なプログラムを展開し、「AINU ART」の新たな可能性に挑戦します。
| 開催日 | 2026年10月11日(日)、12日(月・祝) |
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© 公益財団法人アイヌ民族文化財団
※情報は取材時のものです。最新情報は各公式サイト等をご確認ください。

