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  3. 青函レボリューション――海峡の記憶をたどる【前編】
  • 北海道ヒストリア

2026.03.02
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  • 北海道・北東北の縄文遺跡群
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青函レボリューション
――海峡の記憶をたどる【前編】

津軽海峡で隔てられているにもかかわらず、
函館と青森の間は、太古から人の行き来が途絶えたことはなかった。
縄文土器、日本最大の埋蔵銭、物流革命、世界最長の海底トンネル…、
そして北海道新幹線の開業によって新幹線が津軽海峡をつなぎ、今春で10年。
海峡が秘める変革の記憶をたどった。

文:北室かず子/写真:田渕立幸

日本最多 約39万枚の銭(ぜに)

世界文化遺産「北海道・北東北の縄文遺跡群」のお膝元、函館。市立函館博物館には、市内の縄文遺跡から発掘された見事な縄文土器が鎮座している。

同館学芸員の福田裕二(ふくだ ゆうじ)さんは、こう語る。「縄文時代の早期から津軽海峡をはさんだ両地域はほぼ同一の文化圏なんです。函館で発掘されたこの円筒上層式(えんとうじょうそうしき)土器は、青森県の三内丸山(さんないまるやま)遺跡の土器と共通しています。約7,000年前にピークを迎えた縄文時代中頃の「縄文海進(かいしん)」と呼ばれる時期は、現在よりも温暖で海水面が上昇しました。海路は、より活発な交流・交易をもたらし、津軽海峡をはさんだ青函の交流は途切れたことがないのです」。

円筒形で、土器上部の口が外向きに開いた円筒上層式土器(函館市出土)。市立函館博物館所蔵

展示中の土器からは、約8,000年以上も前からの青函のつながりが読み取れるそうだ。と、その隣のホールにある展示ケースの膨大な古銭に目が釘付けになった。こ、これは何だ? 

昭和43年(1968)、津軽海峡に面した志苔館(しのりたて)跡に近い道路拡張工事現場でトラブルが起きた。ブルドーザーが進めなくなったのだ。

志苔館は室町時代に築かれた和人の館である。トラブルの原因は、無数の古銭。「銭は金属なので、ブルドーザーの走行用ベルトが滑ってしまったそうです」と福田さん。その数、日本史上で最多の38万7,514枚、総重量およそ1.6t。銭種は93種類もあり、ほとんどが中国から渡来した銭であった。その時代は前漢から明代まで約1,500年間に及ぶ。

志苔館跡近くから発掘された古銭のうち、最も古い銭は紀元前175年に鋳造が始まった前漢時代の「四銖半両(ししゅはんりょう)」。市立函館博物館所蔵
平成15年に国の重要文化財に指定。あまりに膨大だったため、古銭の枚数が確定したのは9年後だった。市立函館博物館所蔵
出土した銭の名称と年代別のリストを市立函館博物館で見ることができる。約9割が北宋(ほくそう)のものだった。

かつてここは銭亀沢(ぜにがめざわ)村という名だった。銭亀沢村から甕(かめ)に入った銭が出てきた。「伝説が地名として継承されてきたのでしょう」と、福田さんは言う。

今も残る銭亀町の地名。国道278号沿いで標識や橋の名、小学校の名で見ることができる。

いったい誰が何の目的で埋めたのか。

それは謎だという。当時は青森県の十三湊(とさみなと)を拠点にしていた豪族・安東(あんどう)氏が夷島(えぞがしま)※との交易を独占し、配下を送り込んでいた。志苔館の主、小林太郎左衛門良景(こばやし たろうざえもん よしかげ)もその一人であった。

※夷島は江戸時代より前の呼称で、江戸時代の呼称は「蝦夷地 (えぞち)」。

直下に津軽海峡と志海苔(しのり)漁港、西に函館山を望む志苔館跡の絶景。
志苔館跡は高さ約20mの海岸段丘上にあり、国の史跡に指定されている。
四方を土塁で囲まれた志苔館跡の郭内は東西70~80m、南北50~65m、約4,100㎡。土塁の間から見える函館山は、古名「臥牛山(がぎゅうざん)」の通り、横たわる牛のごとし。

「蓄財した銭が放置されてしまったのでしょうか。たしかなのは、津軽海峡をはさんで活発な交易があり、大きな富を生んだということです。最も新しい銭が14世紀の洪武通寳(こうぶつうほう)、銭が入っていた甕も、越前(えちぜん)と珠洲(すず)で14世紀後半に作られたものなので、その少し後に埋められたと考えられています」。

交易の富と青函

それから約1世紀後、志苔館で歴史上の大事件が起きた。福田さんはこう語る。「和人にとって富を生んだ交易は、アイヌの人々にとっては公正なものではありませんでした。そんななか、この地のアイヌの少年が和人の鍛冶屋にマキリ(小刀)を注文したところ品質が悪く諍(いさか)いになり、あろうことか少年は鍛冶屋に殺されてしまいます。それをきっかけに渡島半島の首領コシャマインを中心とするアイヌが立ち上がったのです」。

これが、康正3年(1457)に始まったコシャマインの戦いである。その結果、道南にあった和人の館12のうち志苔館をはじめとする10が陥落した。

「北海道・北東北の縄文遺跡群」の世界文化遺産登録にも携わった福田さん。

交易の利を物語る銭。交易の不公正に抗して立ち上がったアイヌの人々。中世の史実は、貨幣経済が発達する日本海交易における青函の強固なつながりを証言している。

空から見た志苔館跡。付近の海岸線は古くから「宇賀(うが)の昆布」の産地だった。昆布は最大の交易品。中世の函館は宇須岸(うすけし)と呼ばれていた。
志苔館跡の土塁に登って、津軽海峡を望む。

【中編】では、青函をつなぐ海路に起きた変革を追ってみよう。

Information

市立函館博物館

住所函館市青柳町17-1
Google Map
電話番号0138・23・5480
開館時間11月~3月9:00~16:30(16:00までに入館)、4月~10月9:00~17:00(16:30までに入館)
休館日月曜・毎月最終金曜・祝日(GWと11月3日は除く)、年末年始、臨時休館あり
入館料一般100円、小中高大学生50円
アクセス市電「青柳町」電停から徒歩約7分
関連リンクhttp://hakohaku.com

※情報は取材時のものです。最新情報は各公式サイト等をご確認ください。

Information

史跡 志苔館跡

住所函館市志海苔町・赤坂町
Google Map
電話番号0138・21・3456(函館市教育委員会生涯学習部文化財課)
24時間開放。駐車場なし
アクセス函館駅前から函館バスで「志海苔」停留所下車(所要約35分)。停留所から徒歩約260m
関連リンクhttps://www.city.hakodate.hokkaido.jp/docs/2018032900043/

※情報は取材時のものです。最新情報は各公式サイト等をご確認ください。

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