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  3. 古代オホーツク紀行 ――海の狩猟民が生んだ造形を求めて 【中編】
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2026.01.19
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古代オホーツク紀行
――海の狩猟民が生んだ造形を求めて 【中編】

奈良・東大寺の大仏が開眼した頃、北海道のオホーツク海沿岸では、
謎に満ちたオホーツク文化が花開いていた。
オホーツク文化を担ったオホーツク人は、海の狩猟民だ。
大陸からサハリンを経て北海道に来たとされ、その道すじは流氷の南下と重なる。
オホーツク人が残した造形は、シンプルにして本質をつかんでおり、
動物像からは狩猟民ならではの鋭い観察眼もうかがえる。
生命感あふれる造形を訪ねて、網走、斜里を旅した。

文:北室かず子/写真:田渕立幸

ゴジラ岩に対抗して

【前編】で、チャシコツ岬上(みさきうえ)遺跡の地形がユニークであるとご紹介したが、この写真をご覧いただければ一目瞭然。亀にそっくりなのである。調査を行う斜里町立知床博物館の学芸員、勝田一気(かつた かずき)さんはこう語る。「昔から地元では亀岩(かめいわ)と呼ばれてきました。ウトロにゴジラ岩というゴジラに似た岩があるので、いっそガメラ岩にしようかという意見もあったらしいです」。

斜里町の市街地からウトロに向かう途中に見えてくるチャシコツ岬上遺跡。
上空から見たチャシコツ岬上遺跡。写真提供=斜里町立知床博物館

チャシコツ岬上遺跡は、今から約1,200年前のオホーツク人の集落跡である。オホーツク人は海の狩猟民。モヨロ貝塚がそうであるように、海岸近くに生活の基盤を築いた。チャシコツ岬上遺跡も海の間近にあるのだが、標高50m以上の崖の上だ。水や食料の調達も困難であろう場所に、31軒もの竪穴住居跡が密集していた。それはなぜなのか。

勝田さんいわく「ここなら眺望が効くので異なる集団の船の往来もすぐわかりますし、食料源である海獣の動きも観察しやすかったでしょう。異集団と距離を保ちつつ、海で生活していくために、チャシコツ岬はうってつけの立地だったのです」。

チャシコツ岬下B遺跡出土のクマ頭部の像。斜里町立知床博物館所蔵
チャシコツ岬下B遺跡出土のラッコの像。斜里町立知床博物館所蔵
チャシコツ岬下B遺跡出土のアザラシの像。斜里町立知床博物館所蔵
(左)カエルを装飾した土器の破片。チャシコツ岬下B遺跡出土。斜里町立知床博物館所蔵。(右)カエルと考えられる造形はモヨロ貝塚でも発見されている。網走市立郷土博物館所蔵
フクロウの像。チャシコツ岬上遺跡出土。斜里町立知床博物館所蔵

最新技術でオホーツク土器を調べると、陸の哺乳類ではない、アザラシやクジラなどの海の哺乳類の脂が検出されるという。つまり海の哺乳類を土器で煮炊きして食べていたということだ。勝田さんは「動物がいなかったら生きていけないわけですから、彼らが残した造形には、それらを大切に思う気持ち、自然への敬意が込められている気がします。小さな道具などに入れられた彫刻からも、手先が器用で豊かな表現力を持っていることを感じます」と言う。

チャシコツ岬上遺跡の見学会で解説する勝田さん。※同遺跡は整備中のため、見学会以外での立ち入りはできません。写真提供=斜里町立知床博物館

旅するコイン

チャシコツ岬上遺跡では、遠い本州とのつながりもうかがえる。奈良時代に平城京(奈良県)で発行された貨幣、神功開寳(じんぐうかいほう)が出土しているのだ。「当時、北海道は貨幣経済ではないので通貨として伝わったのではないです。非常にすり減っていたことから、お守りとして大切に磨かれて磨耗したのではないかという見解もあります」と、勝田さんは語る。

神功開寳。材質は銅。斜里町立知床博物館所蔵

海獣を狩って糧としていたオホーツク人に貨幣は不要だし、律令国家の権威も遠い一地方のものでしかなかっただろう。ならば、神功開寳は今でいうキラキラのチャームだったのでは、などと想像すると楽しい。

斜里町立知床博物館では、神功開寳にこんなキャッチフレーズを付けている。「旅するコイン」。オホーツク人がすり減るほどに夢中で磨いて愛でたかもしれないキラキラは、斜里町立知床博物館の展示室にひっそりとたたずんでいる。旅の記憶を胸に抱きながら。

土器の変遷がよくわかる斜里町立知床博物館の展示。
斜里町立知床博物館

ロシア極東から北海道へ。壮大な移動をしてきたオホーツク人。その背後にはさまざまな文化の影響、交流が見てとれる。【後編】では、こうした世界の北方民族の文化に触れられる、とっておきの場所へご案内しよう。

Information

斜里町立知床博物館

住所斜里町本町49-2
Google Map
電話番号0152-23-1256
開館時間9:00~17:00
休館日4月~10月は月曜休館(祝日の場合は翌火曜休館)、11月~3月は月曜・祝日休館(月曜が祝日の場合は休館 翌火曜も休館)、年末年始
入館料一般300円、斜里町民と小中学生無料
アクセス知床斜里駅より徒歩約20分、巡回バス「しゃりぐる」で約6分、または約27~28分(1日3便)
関連リンクhttps://shiretoko-museum.jpn.org/

※情報は取材時のものです。最新情報は各公式サイト等をご確認ください。

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2026.01.05公開
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2026.02.09公開予定

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