厚岸駅
氏家かきめし
1,480円(税込)

4粒も乗った大粒かきの旨味を堪能
札幌駅6:48発の特急「おおぞら」1号に乗車! キュイーンというタービン音を響かせて加速していくディーゼルターボエンジンの心地よさを味わいながら釧路へ向かいます。定時に到着した釧路駅で、根室方面へ伸びる花咲線に乗り換え。大自然の中を走る花咲線は景観がとても美しいです。
今回の目的地である厚岸駅に降り立つと、駅前ロータリーと駐車場の先に小さな売店が見えます。これが名物駅弁を製造・販売する「厚岸駅前氏家待合所」です。注文を受けてから盛り付けるそうなので、店長の向山さんに早速「氏家かきめし」をお願いしました。フタを開けると、かき・あさり・つぶ・ふき・しいたけと、茶色のグラデーションが目に飛び込んできます。これらの具材はすべて、濃さと味が異なる煮汁で別々に煮込まれています。そして、しっかり炊き上げられたごはんも、もちろん深い茶色です。
主役の茶色はつややかで、ぷりっと弾力のあるかき。水から火にかけてゆっくり温度を上げ、アクを丁寧に吸い取り、中までしっかり火を通してから秘伝の煮汁で煮絡めています。かきは加熱すると縮んで硬くなりがちですが、ポイントは“水から茹でる!”です。熱湯や熱い煮汁ではなく、低温からゆっくり加熱することで、ふっくらと柔らかく仕上がるのです。

この煮汁の上澄みを入れて炊いたごはんは、食べるとかきの風味がふんわりと鼻に抜けていきます。見た目ほど味は濃くなく、深く染みた旨味を感じます。北海道米のゆめぴりかをブレンドした特別仕様米は、小型のガス釜で一日数回に分けて炊いているそう。旨味と甘みが強く、冷めても美味しいので、260gのボリュームでもどんどん箸が進みます。

他の茶色い食材も旨味の強いものばかり。淡い茶色のあさりの柔らかな食感、ベージュ色のつぶのコリコリ食感、緑がかった茶色のふきの滋味、ツートンカラーのしいたけに染みる出汁、どれも食材が際立つ味付けです。そこに、たくあんと福神漬が彩りと塩味のアクセントを加えてくれます。




「かきはパワーフードですから、ちょっと元気がないときこそかきめしを食べていただきたいですね」と向山さん。温かい緑茶と一緒に食べると旨味がさらに広がるとのことです。「家で食べるなら、野菜いっぱいのお味噌汁がおすすめです」。各地の物産展には、関東にある委託工場から出荷しているそうなので、見かけたらぜひ味わってみては。
電話で予約注文すると、駅のホームまで届けてくれるサービスもあります。停車時間が短いので、支払いの際はお釣りがないようにしましょう。温かい緑茶を用意して、花咲線の大自然を眺めながら食べる「氏家かきめし」は、大正時代に創業した待合所で受け継がれる歴史を感じさせる珠玉の味でした。
Information


氏家かきめし
| 価格 | 1,480円(税込) |
|---|---|
| 販売場所 | 厚岸駅前 氏家待合所(4〜11月/9:30〜16:00、12〜3月/9:30〜15:00) ※予約注文で営業時間外の受け渡しが可能 |
| 定休日 | 木曜日、正月休みなど不定休あり |
| 問い合わせ | 0153-67-8090 |
※情報は取材時のものです。最新情報は各公式サイト等をご確認ください。
文・イラスト

青山 則靖
#フードプロデューサー
1973年生まれ、帯広市出身。フードプロデューサーとして飲食店のメニュー開発やレシピ制作、料理教室の開催など幅広く飲食に携わる事業を展開しており、テレビ番組やイベントなどでも人気を博している。エゾシカ料理やアイヌの伝統料理への造詣も深く、近年は札幌市内のカフェを間借りして「エゾシカ食堂」という飲食イベントを不定期で開催している。著書に「青ちゃんの解決レシピ 今さら聞けない料理の基本」(エイチエス出版)、「青ちゃん流 失敗知らずの定番料理」(北海道新聞社)がある。