函館駅
鰊みがき弁当
1,380円(税込)

函館駅で不動の人気No.1を誇る大定番
パカッと蓋を開けると、大ぶりな鰊(にしん)の甘露煮が3切れ。半分にカットされた数の子が4切れ。さらに、茎わかめの醤油煮と大根の味噌漬け2枚が白飯を埋め尽くしている「のっけ飯」スタイルの駅弁です。小ぶりな弁当箱のイメージを良い意味で裏切ってくれるボリュームに、思わず顔がほころんでしまいます。
今回は、函館駅の「鰊みがき弁当」をご紹介しましょう。発売は1966(昭和41)年ということなので、60年近い歴史を誇る大人気のロングセラーです。眺めているだけで満足してしまうほど豪華な内容は、発売以来変わらないとのこと。どれから箸を付けるかしばし迷いますが、ここはやっぱり商品名にもなっている鰊から行きましょう。
鰊の甘露煮は、箸で持ち上げられるけれど簡単にほどける丁度いい柔らかさ。小骨も全く気にならない……というか、骨ごと食べられます。販売元のJR北海道フレッシュキヨスク株式会社フード事業部の塚原さんにその秘訣を訊ねると、「誕生以来継ぎ足し続けている秘伝のタレで、圧力鍋を使って骨まで柔らかく煮た身欠き鰊を、煮汁の中で冷ましています」とのこと。料理の世界では、煮魚はできたてより寝かせたほうが美味しいと言われています。冷ますことで中まで煮汁が染み込み、身も締まって煮崩れも防げるのです。

色の濃い見た目からは想像できないほどまろやかな味わいです。あっさりとした甘みに、醤油のいい香りが食欲を倍増させてくれます。そこにケシの実がアクセントとなって、立て続けに3切れ食べてしまいそうなほどのおいしさ。ちなみにこの鰊の甘露煮は真空パックの単品でも購入可能なので、自宅で弁当を再現したり、鰊蕎麦にしてみるのもいいですね。
もう一方の主役の数の子は、パリッとした歯応えの後にプチプチと弾けていく食感がたまりません。出汁が上品に利いた塩味が良いですね。塩漬けされた上質な数の子を塩抜きしてから筋を取り、味付けするところまで自社で仕込んでいるそうで、食べるとその丁寧な仕事ぶりがよくわかります。数の子をこんなに味わえる駅弁なんて、贅沢そのものだと感激しました。

そして、この駅弁の名脇役が茎わかめの醤油煮。こちらも塩漬けされた三陸産の茎わかめを塩抜きして、薄味で炊いています。こりこりした食感を残すために、煮る時間の見極めが重要だそう。細部にも職人の技が光ります。大根の味噌漬けには、彩りを添えるだけでなく、醤油味の鰊と塩味の数の子を調和させる役目も。最後の一口まで旨味のハーモニーが広がり続ける、おいしさの四重奏です。

手の中に収まる小ぶりなサイズは、特急列車のテーブルにもジャストフィット。塚原さんも「昔から愛され続けてきた、これぞ駅弁という味わいを車窓の景色と一緒に楽しんでいただきたいですね」と語ります。そんな旅のお供はもちろん、函館駅に着いてから購入して、宿で晩酌のお供にするのも最高じゃないかと個人的には思います。「鰊みがき弁当」、これからも変わらずに歴史を刻んでほしい逸品です。
Information


鰊みがき弁当
| 価格 | 1,380円(税込) |
|---|---|
| 販売場所 | 駅弁の函館みかど JR函館(営業時間 6:00~20:00) 北海道四季彩館 新函館北斗ラッチ店(営業時間 7:00~20:00) 北海道四季彩館 新函館北斗ホーム店(営業時間 6:10~18:40※閉店休憩 8:00~9:00) |
| 営業時間 | 各店舗で異なる |
| 問い合わせ | 0138-83-7288(JR北海道フレッシュキヨスク株式会社) |
※情報は取材時のものです。最新情報は各公式サイト等をご確認ください。
文・イラスト

青山 則靖
#フードプロデューサー
1973年生まれ、帯広市出身。フードプロデューサーとして飲食店のメニュー開発やレシピ制作、料理教室の開催など幅広く飲食に携わる事業を展開しており、テレビ番組やイベントなどでも人気を博している。エゾシカ料理やアイヌの伝統料理への造詣も深く、近年は札幌市内のカフェを間借りして「エゾシカ食堂」という飲食イベントを不定期で開催している。著書に「青ちゃんの解決レシピ 今さら聞けない料理の基本」(エイチエス出版)、「青ちゃん流 失敗知らずの定番料理」(北海道新聞社)がある。