札幌駅
石狩鮭めし
1,350円(税込)

北海道の鮭の旨味を最大限に引き出した逸品
1923(大正12)年から販売され、時代に合わせてリニューアルを続けている超ロングセラーの駅弁。昨今の駅弁は弁当箱の横幅を広げて中身を多く見せるものが増えていますが、「石狩鮭めし」は「列車旅のお供に景色を楽しみながら味わってほしい」という思いから、片手で持てるコンパクトなサイズを守り続けています。
蓋を開けると、まず容器の3/4を占める鮭めしが目に飛び込んできます。昆布で炊いたごはんの上にほぐした鮭と錦糸卵を敷き詰め、その上に鮮やかな朱色に輝くいくらが贅沢に乗っています。そして、鮭の中骨入りの昆布巻き、鮭入りの蒲鉾、フキの土佐煮の3種の副菜に、香の物として奈良漬けが2枚。このバランスが絶妙です。
さっそく鮭めしをパクリ。昆布ごはんの旨味の後にほぐし鮭の食感と錦糸卵の甘みがやってきて、ぐっと味わいが広がります。さらにいくら醤油漬けが弾けて塩味も加わり、鮭めし全体に完璧とも言える一体感が生まれます。
駅弁は常温で食べることが前提のため、使用するお米は冷めても美味しい品種が選ばれることが多く、「石狩鮭めし」でも冷めても美味しく、粒立ちの良い北海道産のななつぼしが使われています。注目は炊き方で、実はごはんは大量に炊いた方がふっくらと仕上がります。「石狩鮭めし」は、電気よりも火力が強いガス炊飯器で14kg分を一気に炊き上げているので、芯までふっくら。派手さはないものの、すべての食材を受け止め、際立たせる縁の下の力持ちとしての大きな役割を果たしています。
ごはんの上に乗っている鮭にもこだわりがいっぱい。焼いた鮭を一つ一つ手作業でほぐし、さらに醤油で炊き上げることでしっとり感と旨味がプラスされています。また、イクラは在庫を切らさないよう、毎年秋に1年分を確保。ごはん180gに対して1割以上の25gも使われていて、飾りではない味の決め手としての重要な存在を担っています。

主役の鮭めしを、さらに引き立たてくれるのが副菜です。こちらも北海道産の食材にこだわり、昆布巻きには鮭の中骨を採用。甘辛い味付けに仕上げていて、旨味成分のグルタミン酸が豊富な昆布巻きを一口食べてから鮭めしをほおばると、味覚の相乗効果でさらなる旨味が口いっぱいに広がります。旨味成分のイノシン酸を含むかつお節をまとったフキ土佐煮も続けて食べると、全体的な旨味がさらにアップされていきます。


蒲鉾と奈良漬けも食感の良いアクセントになっていて、「ご飯だけでも美味しいですが、副菜に箸を伸ばすタイミングでひと息入れて、車窓の景色も楽しんでいただければ」と販売元である札幌駅立売商会の代表取締役社長、洲崎昭光さんは言います。「時代と共に味付けや盛り付けなど変化はしていますが、お客さまに満足いただき、北海道の良い思い出の一つになるように、従業員一同、心を込めて作っています」。

駅弁と合わせる飲み物を伺うと、「昼ならお茶、夜ならビールかカップ酒」とのこと。確かに日本酒を合わせると、この旨味がさらに際立つのは間違いありません。駅弁とお酒を一緒に楽しむのも列車の旅の醍醐味。「石狩鮭めし」を最高に楽しむ、それを目的に旅をするのもアリですね。
Information


石狩鮭めし
価格 | 1,350円(税込) |
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販売場所 | 弁菜亭(札幌駅構内5店舗、駅弁自動販売機1台) |
営業時間 | [店舗]5:40~19:30、[自動販売機]5:40~23:50 |
問い合わせ | 011-721-6101(札幌駅立売商会) |
※情報は取材時のものです。最新情報は各公式サイト等をご確認ください。
文・イラスト

青山 則靖
#フードプロデューサー
1973年生まれ、帯広市出身。フードプロデューサーとして飲食店のメニュー開発やレシピ制作、料理教室の開催など幅広く飲食に携わる事業を展開しており、テレビ番組やイベントなどでも人気を博している。エゾシカ料理やアイヌの伝統料理への造詣も深く、近年は札幌市内のカフェを間借りして「エゾシカ食堂」という飲食イベントを不定期で開催している。著書に「青ちゃんの解決レシピ 今さら聞けない料理の基本」(エイチエス出版)、「青ちゃん流 失敗知らずの定番料理」(北海道新聞社)がある。