
海峡の光
辻 仁成(著)|新潮社
大人になって再会した、いじめの当事者同士。それぞれの「光」とは?
1月は芥川賞・直木賞の発表があります。受賞作が決まるとすぐに店頭に特設コーナーを設けるので、本屋としても毎回審査結果をドキドキしながら待っています。さて、今回ご紹介する「海峡の光」も、第116回下半期の芥川賞受賞作品です。
物語の舞台は、青函連絡船が廃止されて青函トンネルが開通した直後の函館。連絡船の職員から刑務所の看守に転職した主人公の斉藤のもとに、小学生の頃に自分をいじめていた花井が受刑者として入所してきます。自分を優等生に見せかけることで周りを支配した花井は、みずから手を下すことなく人を操って相手をいじめていました。そんな花井の陰湿さを感じ取った斉藤は、次のターゲットになってしまい、苦しい日々を過ごすことになったのです。
昔から何を考えているかわからない花井の行動や言動。斉藤は、模範的な刑務所生活を送っている彼の姿を見て苛立ち、自分を見失ってしまいます。自由を奪われた中で生き生きとしている花井と、自由に生きているはずなのになぜか苦しい斉藤。昔とは立場が逆転しているのに精神的には花井の方が優位に立っていきます。
自由とはなんだ? 人生とはなんだ? そもそも自分とはなんだ?
暗い海の底で考え続ける斉藤に光は射すのか。自分を照らしてくれる光を見つけるのか、誰かを照らすための光になるのか。そして出所が近づく花井との関係はどうなっていくのか。札幌駅から特急「北斗」に乗車して、ページをめくってみましょう。読み終わった頃に着く函館の海峡の光は、どんな風に見えるでしょうか。
筆者

小笠原 光
#三省堂書店 札幌店
1983年生まれ、釧路市出身。就職や異動などをきっかけに釧路(道東)-旭川(道北)-札幌(道央)と、北海道を東から西へ旅をしてきた。長年にわたって接客業に携わる中、「興味のなかった分野に身を置いたらどうなるか」という好奇心から書店員の道へ。読書が特別好きだったわけではないが、今はどっぷりとハマっている。好きな絵本は「パンどろぼう」シリーズ。店舗では専門書の売場を担当している。
三省堂書店 札幌店
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| 電話番号 | 011-209-5600 |
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| 定休日 | 年中無休(12月31日、元日を除く) |
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