
アラシ 奥地に生きた犬と人間の物語
今野 保(著)|山と渓谷社
厳しく美しい大自然に刻まれた犬と人間の絆
今回ご紹介するのは、長らく絶版で入手困難だった「伝説の名著」の復刊です。1917年に早来町(現・安平町)で生まれた著者の今野保さんは、製炭業を営む家族と山で暮らしていました。そんな日常で大切なパートナーだったのが「犬」です。
この短編集には、今野さんの幼少時の兄貴分「クロ」と、少年期を共に過ごした「アラシ」、かつて主人の仇を討つために獰猛なヒグマと戦った「タキ」、人間の言葉を理解しているようなボス犬「ノンコ」という4頭の犬が登場します。
中でも私の心に残ったのは、本のタイトルにもなっている「アラシ」です。大嵐の夜に家へ迷い込んできたことと、炭焼きの最重要作業「アラシがけ」にちなんで名づけられたアラシは、人の気持ちがわかる賢い犬。行動を先読みして助けてくれたり、襲ってきた山犬を果敢に撃退したりする中で、家族との絆がどんどん深まっていきます。
普通の犬ならそのまま飼い主のもとで生涯を終えるのでしょうが、山で生まれたアラシは違いました。人間と一緒に過ごすより、最後は野生に帰る道を選びます。本物の絆があるからこそ、今野さんたちもアラシを引き止めることはしませんでした。
アラシが山に戻る決断をしたきっかけは、ぜひ本で確かめてみてください。物語のラスト、別れのシーンには涙がこらえられませんでしたが、これが犬本来の姿なんだと納得して清々しい気持ちにもなりました。他の話にも泣けるエピソードが多いので、JRの車中で読む際はくれぐれもご注意を(笑)。
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筆者

小笠原 光
#三省堂書店 札幌店
1983年生まれ、釧路市出身。就職や異動などをきっかけに釧路(道東)-旭川(道北)-札幌(道央)と、北海道を東から西へ旅をしてきた。長年にわたって接客業に携わる中、興味の無かった分野に自分の身を置いてみたらどうなるかが気になって書店員の道へ。読書が特別好きなわけではなかったが、今はどっぷりとハマっている。好きな絵本は「パンどろぼう」シリーズ。店舗では専門書の売場を担当している。
三省堂書店 札幌店
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