
ミステリーな北海道
河出書房新社
北海道を題材にしたミステリアンソロジー
今回ご紹介する「ミステリーな北海道」は、北海道の雄大な自然を舞台に、6人の作家がそれぞれの視点で描いた短編アンソロジー。豪華メンバーのミステリーを1冊で読み比べができるのは、とても贅沢ですよね。
北大医学部の学生が屍体から発見されたぶどうの種の謎を探る「葡萄(渡辺淳一)」、雪まつりの雪像から出てきた大金をめぐるミステリー「白い神々(五谷翔)」、異国情緒あふれる港町・函館の競馬場が舞台の「カマルグの白い馬(石川喬司)」、札幌の刑務所を脱獄した死刑囚の逃避行「破獄者(船山馨)」、石狩川の鮭の生態に着目した本格推理「溯死(そし)水系(森村誠一)」など、北海道の自然、気候、歴史文化がミステリーの重要な要素として描かれています。
中でも私が特に面白いと感じたのは、「朝になったら、タッチミー(片岡義男)」です。苫小牧でフェリーを降りた女性ライダーが、ハーレー・スーパーグライドに乗ってそのまま海岸線に沿って知床まで疾走し、その美女を目撃した4人の男達は、戯れにバイクで彼女を追跡することに。彼女は何度も給油や休憩を繰り返し、なかなか目的地に着きません。夜になって仲間たちが帰っても、追跡を止めなかったのは一人だけ。
なぜ彼女は走り続け、彼はなぜ追っているのか。
途中の風景描写がとてもリアルで、地図アプリを片手に「今、この辺りを走っているんだ」と思いながら読み進めました。
やがて——読者を置き去りにするような衝撃のラストが訪れます。この結末をどう受け止めるか、それはあなた次第です。
さわやかな6月の北海道は、お出かけにもぴったり。次々に移り変わる車窓の風景のようにバラエティ豊かな作品世界に浸れるこの短編集、JR旅のお供におすすめします。
※情報は記事作成時のものです。最新情報は各公式サイト等をご確認ください。
筆者

小笠原 光
#三省堂書店 札幌店
1983年生まれ、釧路市出身。就職や異動などをきっかけに釧路(道東)-旭川(道北)-札幌(道央)と、北海道を東から西へ旅をしてきた。長年にわたって接客業に携わる中、興味の無かった分野に自分の身を置いてみたらどうなるかが気になって書店員の道へ。読書が特別好きなわけではなかったが、今はどっぷりとハマっている。好きな絵本は「パンどろぼう」シリーズ。店舗では専門書の売場を担当している。
三省堂書店 札幌店
| 住所 | 北海道道札幌市中央区北5条西2丁目5 JRタワー札幌ステラプレイス5F Google Map |
|---|---|
| 電話番号 | 011-209-5600 |
| 営業時間 | 10:00~20:00 |
| 定休日 | 年中無休(12月31日、元日を除く) |
| アクセス | JR札幌駅直結徒歩3分 |